顔合わせ

今日、研究室が決って初めての顔合わせがあった。僕が研究室に入るともうほとんどの人はそろっていた。研究室の先輩達は、僕らにあまり触れずに、何かしらの作業をしていた。僕らはどうすればいいかわからずに、馬鹿みたいに突っ立ていた。
しばらくすると、教授がみんなそろったから自己紹介をしましょうと言って。大学院の先輩から自己紹介を始めた。彼は少し緊張した面持ちで、簡単な自己紹介をした。それにしたがって、他の先輩達も、たま冗談みたいなことを交えながら、自己紹介をしていった。
そして、何人かの自己紹介が終わって、ある先輩の番になった。彼は恥ずかしがりやなのか、少し下を見ながら自己紹介を始めた。
「四年の○○です。あー、就職活動は早めに始めたほうがいいです」
とても簡単な自己紹介だった。みんなが終わりかなと思って、拍手を始めたそのとき。僕は彼の言葉を聞いた。
ヒロシです・・・・・・」
とても小さな声だった。多分、自己紹介の流れで、冗談を一つ入れなければならない雰囲気中、シャイな彼の精一杯のギャグだったのだろう。
しかし、その言葉は拍手の中に消えていった。僕達新人の仲で気がついたのは、僕だけかもしれない。先輩達には確実に聞こえていたと思う。しかし、無常にも誰も反応してくれなかった。
でも、僕は確かに聞いたのだ。
彼の声を・・・・・・。