色の見えない人

赤い絵だった。街も、木も、人も、空も、海も、大地も、白も、黄色も、緑も、青も、黒でさえ、全てが赤みを帯びていた。
「気持ち悪い絵」
学校の先生は小さな声でそういうと、今度は諭すように言った。
「空は青で木は緑でしょ」
「先生は夕焼けを見たことが無いの?」
そう言い終わると同時に、衝撃音がし頬に痛みが走った。
「空は青!海は水色!そんなこともわかんないの!!」
先生の顔は赤みを帯びていた。後ろを振り向くと、薄い水色の空が見えた。夕焼けで染まったわけではないらしい。もう一度、先生の顔を見る。汚い色だと思った。夕焼けのそれとは違う。どうやら、先生は夕焼けを知らないらしい。それどころか、空も海も見たことが無いらしい。空なんてここからでも見えるのに・・・・・・。もしかしたら、先生には見えないのかもしれない。可哀想な人だと思った。本当に可哀想な人だ。あんなに綺麗な色なのに・・・・・・。僕はこの可哀想な人のことを思い、少しだけ泣いた。