創作

掴んだその手を離さない

僕の前を女の子が走っている。 まるで僕を誘っているかのように・・・・・・。 僕は誘われるままに、その小さな背中を追いかける。 彼女は立ち入り禁止と書かれた看板のかかっている柵を軽やかに飛び越え、廃屋となった小さな建物に入っていく。 僕は柵を飛…

得たもの、覚えたこと

難解な言葉を覚え、真実を覆い隠す 出鱈目な論理で、現実を捏造する 努力を妬み、暇を弄ぶ 愛を鼻で笑い、自分の殻に閉じこもる 理想を見下し、事実から目を逸らす

夢の後

小細工は所詮小細工でしかなく、僕のメッキはものの見事に剥がれ落ちた。僕のメッキは幸福の王子とは違って、剥がれ落ちると何の役にも立たなかった。寧ろ、その下手なメッキは僕が矮小で煮ても焼いてもメッキを張っても使えないという証明にしかならなかっ…

悪魔との取引

今日、悪魔が取引を持ちかけてきた やつは十字路に佇む俺の後ろにいた やつは言った、代償など要らないと ただ、ただ「はい」と言うだけでよいと それはただ苦痛で、ただ快楽だった 俺は言われるがまま「はい」と言った 俺は手に入れ、又はただ単に失った 俺…

絶対時間

脳の奥で何かのスイッチが入った。何のスイッチかわからない。しかし、そのスイッチが入った瞬間から、僕は無敵になった。それは理由の無い確信だった。突如、今まで意味不明だった記号の列が明確な意味を形作り、唯一の解が瞬時求められた。自分の体温が上…

色の見えない人

赤い絵だった。街も、木も、人も、空も、海も、大地も、白も、黄色も、緑も、青も、黒でさえ、全てが赤みを帯びていた。 「気持ち悪い絵」 学校の先生は小さな声でそういうと、今度は諭すように言った。 「空は青で木は緑でしょ」 「先生は夕焼けを見たこと…

雪の日

朝起きると雪が降っていた。それは地面に落ちては、元から存在しなかったかのように消えてゆく。それでも雪は自らの存在を証明するかのごとく、ただ降り続ける。 どうせ消えてしまうくせに・・・・・・。 ふと思った。 ・・・いつからだろう。 昔は雪が降る…

○○売りの少女〜ダメ。ゼッタイ。〜

空から白い雪が舞い降り、あたり一面はその白い雪に覆われている。空も綺麗な白に包まれていると思い見上げると、闇の中に白い粒が見える程度だった。 何故だろう・・・・・・。 空にはこぼれるほどいっぱいの雪があるはずなのに・・・・・・。 視線を地面に…