夢の後

小細工は所詮小細工でしかなく、僕のメッキはものの見事に剥がれ落ちた。僕のメッキは幸福の王子とは違って、剥がれ落ちると何の役にも立たなかった。寧ろ、その下手なメッキは僕が矮小で煮ても焼いてもメッキを張っても使えないという証明にしかならなかった。
メッキを剥がされ完膚なきまでに叩きのめされた僕は、剥がれ落ちたメッキをポケットに拾い集め、惨めなまでに惨めにその場を後にした。
僕はそのままフラフラと電車に乗り込んだ。右の化粧の濃い女性の話しが五月蝿い。前に居る若い学生の集団が五月蝿い。左に居る中年男性のいびきが五月蝿い。僕はイヤフォンを耳にはめ、外界から聴覚を遮断した。耳からは名前も知らないアーティストの名前も知らない歌が流れ、僕はその心地よいリズムに身を任せ、名前も知らない歌を消費する。右のババアの笑い顔が気持ち悪い。目の前の糞餓鬼の憂いの無い目が気持ち悪い。左の疲れきった生物の姿が気持ち悪い。僕は目蓋を閉じ視界を塞いだ。それなのに、気持ち悪い男が居る。それなのに、惨めな男が居る。これは僕だ。畜生。
僕は目をあけ小説を読む事にした。これも消費。後には何も残らない。この惨めな気分も消費できないものか。